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zoom RSS 漆の実のみのる国

<<   作成日時 : 2015/07/09 11:12   >>

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以前から愛読している藤沢周平、改めて「藤沢周平全集」を図書館から借りランダムに読み始めて1年程経とうとしている。

作品には市井もの、士道もの、秘剣・剣術ものに加えて歴史もの他があるが、先日「漆の実のみのる国」を読んだ(その後「幻にあらず」を追読)。上杉治憲(後の鷹山)が生涯を傾けた米沢藩改革の顛末についての作品で藤沢周平の絶筆となったもの、歴史もののジャンルになる。
遅くなったのには訳が有って、私の嗜好で他のジャンルに比べ歴史物などは後回しになる、さらに加えれば、題名の“平凡さ”にも影響された。例えば作品名が「忠臣逆臣」などであればおそらくもっと早く手に取っていただろうと思う。

さて、上杉鷹山とその藩政改革についてはご存じの向きも多いし、ネットなどでも調べることが出来るため、再度申し上げるつもりはない。作品の粗筋も同様である。
私が興味を引いたのは、「竹俣美作当綱(たけのまたみまさかまさつな)」という上杉家の家臣である。

藩の現状を憂い、藩政改革の必要性を認め治憲に献策し実行するが、藩立て直しの道は険しい。治憲の信頼が篤かったがその改革の道半ばにおいてその信に背くことになるのである。
私はその場面に至り、背信は藩改革頓挫の矛先が藩主治憲に向かうことを防ぐための擬態であり、自ら藩規を逸する行動をとることによって部下に己を弾劾させ改革失敗の責を一身に負うこれぞ忠臣、と思ったのである。いわば「樅の木は残った」の原田甲斐が忠臣と描かれたように。
そう思わせるに足る当綱の働きがあったのであるが、全編を読み終えてみるとやはり彼は自らの権勢に奢り変節したということになる。その当綱の心情の変遷を思いやると興味深い。

もう1名、莅戸善政(のぞきどよしまさ)。かれも作品の全編に亘って登場する上杉家の家臣であり、治憲の信任篤い能吏である。藩政の中核に位置した後一度隠居するが、その後も改革の道を洞察し己の考えをまとめ献策するなどが評価され、請われて再勤し治憲のいわば後期の改革に力を発揮する。

それにつけても米沢藩の窮乏の本を糺せば、転封や減封であっても維持した家臣団と前例踏襲主義、地理的条件(雪深い)、ある時期からの歴代藩主の浪費放蕩、さらには幕命による出費(普請)、予期せぬ自然災害・天候不順であろうか。
現代の企業で言えば、コーポレートガバナンスの欠如ということにもなるか。当時でも技術を盗むという産業スパイは行われていたのだが、漆に関する西国での技術革新を予知できず漆の加工技術に後れを取った点では藩の置かれた地勢的な劣性もあったろう。

様々な艱難を乗り越え、結果的には鷹山没後数年後に藩の負債は完済されるが、米沢藩改革において賞賛されるべきは鷹山一人ではなく、いわゆる“人は城”なのであり、いつ縄が切れるかと言う綱渡りではあったがそれを支えた家臣がいたということが、私には嬉しいことであった。

天才、才能を認め育て包み込むことのできる環境と人智があるか否かが組織の命運を握る。小は家族から大は国家まで理は同じである。

藤沢周平の絶筆である。上杉鷹山とその家臣団を描いた作品がそれということに、私は藤沢周平の思いを、鷹山と支えた家臣への思いを、漠としてではあるが感じることが出来る。人情の機微とそれを思慮し推し量ることのできる人間、志が頓挫してしまった人間、志を持ち続けた人間、彼らの綾なすうねりが私の心を豊かにしてくれた。

さて全集読破にもう少し歩を進めるか。

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